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自転車()で65km移動してわかったこと

· 7 min read
Ikuya Yamada
non-stack engineer

諸々の事情が重なり、猪苗代湖を一周したときの話。

10月末の土曜日、駅構内で買ったサンドイッチとホットコーヒーを手に、早朝の東北新幹線に乗り込む。周囲には、ゴルフバッグをもつ乗客がちらほら見られる。那須高原でゴルフでもするのだろうか。(ゴルフバッグを持っているのだからゴルフはするだろうが、問題はそれが那須高原なのか、という点だろう。)

空席を挟んで私と同じブロックに座るサラリーマン風の男性は、スポーツ紙を広げたまま睡眠と覚醒を繰り返しているようだった。スポーツ紙を読んで寝てしまうのは、小難しい本を読んで眠くなるのとどれほどの違いがあるだろうと、これまた眠くて働かない頭で考える。

そうこうしているうちに、新幹線は郡山駅に滑り込む。案内板を見ながら素早く乗り換え、磐越西線、会津若松行き4両編成の列車に飛び乗る。出発までの間、周囲を観察する。私の推定によると、乗車の用途としては観光と日常利用が半々くらいだろうか。

都市部から住宅街、田園風景へと景色は移り変わり、山をいくつか超えただろうか、40分ほど揺られ、そろそろ猪苗代駅に着くかというころ、車内アナウンスが流れはじめる。

「右前方にございますのは・・」

といった具合である。電車でこうしたガイドも珍しいなあと思いながら耳を澄ませる。明治時代に噴火があったこと、その噴火で五色沼を含む独自の地形が誕生したことなどが短い時間によくまとめられている。録音した音声を流すでもなく、駅員さん自身が慣れた様子でアナウンスする。

そして、車窓から見える山々がいわゆる「表磐梯」だということなのだが、私が日々拝んでいる富士山の場合、はたしてどの方向が表なのだろうという疑問が浮かぶ。彼の山はきっと、どこから見ても表なのだろう。

さて、「裏磐梯」はリゾート等でよく聞く地名だがそれに比べると「表」磐梯とはあまり耳にしたことがないかもな・・・とか、裏原宿というエリアはあるが、表原宿とは言わなさそうだし、近所の表参道が表の役割を果たしているのだろうか・・とか、地名の場合「裏」とつくとどことなく魅力的な響きが加わるな・・などと哲学的思考の極致に達したところで目的の猪苗代駅に到着する。

猪苗代駅に降り立つと向かって左の方向に観光案内所を見つける。すでに数人が案内所の前におり、私も急ぎそちらへ向かう。事前の調査によると、利用可能時間は9時から16時で、自転車の事前予約はできないとのことだったので、開店と同時に自転車を押さえる必要があると意気込んでいたのである。

だが、そんな心配もあっさり杞憂に終わる。数分待つと私の番になり、これ以上ないくらいスムーズに手続きが進む。

ママチャリ、クロスバイクの2種類から自転車の種別を選択し、さらに電動アシストの有無も選択可能である。つまり選択肢は4つ存在したことになるが、タイヤのサイズ的に・・とか身長的に・・とかもごもご言いながら、事前に考えていた通り電動アシスト付きクロスバイクを選択する。

スタッフの方から、「どちらまで行かれる予定ですか」と質問を受ける。

「猪苗代湖の方に向かい、できれば一周しようかと・・」と煮え切らない答え方をする。ふらりとやってきてあの湖を一周するなんて言ったら怒られるような気がしたからである。

「一周となると4時間は見た方がいいですが大丈夫そうでしょうか。」と続けて問われる。

私は、

「今日は暇なので大丈夫です」

とこたえる。コミュニケーションの教科書的には悪い例に入りそうな返事だが、意図は伝わったようで、料金を支払い、署名をしたところで申し込みは完了する。

続く